熱分解GC/MS分析の基礎
ここでは、GCやGC/MS分析についての基礎的な知識や経験を持ち、
一方で高分子材料の熱分解分析法 (Py-GC) についての経験が浅い方や、
今後、熱分解分析を検討される方を対象としてわかりやすく説明します。
4. 4つの分析法
フロンティア・ラボのパイロライザーを用いる分析法には、以下に示すように、主に4つの手法があります。
- 発生ガス分析法 (EGA-MS)
- シングルショット分析法
- ダブルショット分析法
- ハートカットEGA-GC/MS分析法 (HC/EGA-GC/MS)
これらの分析手法を使用することで、未知ポリマー材料の詳しい分析ができます。まずは、試料を昇温加熱する 1. EGA-MSから始めます。ここで得られた情報をもとに上記2~4の分析法で分析します。これらの分析手法は、未知ポリマー分析において非常に有効な手段となります。
4.1 4つの分析法の装置構成
Fig. 9 に4つの分析法の装置構成を示します。各分析法で使用されているベントフリーGC/MSアダプターは、MSを大気解放せずにカラム交換を可能にする製品です。

4.2 未知ポリマー試料に対しての分析フロー
一般的な未知ポリマー試料に対しての分析フローを示します。
まず最初に、未知試料に対して発生ガス分析を行い、得られたEGAサーモグラムから未知試料の熱特性データを得ます。ここで得たデータを基に次の段階の分析に進みます。
未知試料の同定は検索ソフトウェア F-Search を使用することで、ポリマーと添加剤を定性することができます。

4.3 発生ガス分析法 (EGA-MS)

発生ガス分析法 (EGA-MS)は、GC注入口とMS検出器間を不活性化金属チューブ(EGAチューブ)で直結し、試料を昇温加熱することによって発生するガスをMSで検出する方法です。得られた結果は EGAサーモグラムと呼ばれます。
Fig. 12で使用した試料では、5つのピークが観測されました。
低温領域で観測されるピークは主に残留溶媒、未反応モノマー、添加剤など揮発性成分に由来するものです。
高温領域で観測されるピークは、ポリマー成分の熱分解に由来するものです。
これらピークの数、各ピークの溶出温度範囲は、シングルショット、ダブルショット、ハートカット分析の温度を決定する重要な情報となります。

4.4 シングルショット分析法

試料を、あらかじめ高温に設定した熱分解加熱炉(パイロライザー)へ導入して熱分解させ、熱分解生成物を瞬時にGC分離カラムに導入して、分析する手法です。
次に示すパイログラムは、EGAサーモグラムから得たポリマーの分解終了温度より約50 ºC高い550 ºCに熱分解温度を設定して、シングルショット法により得たものです。
簡便な操作で測定できますが、EGAサーモグラム中の全温度領域の情報が一つのパイログラム上で得られるため、試料によっては解析が複雑となります。そのような場合には、次項のダブルショット分析法が有効な手段となります。


4.5 ダブルショット分析法

試料を二段階で分析する手法です。
なお、ダブルショット分析装置構成図 (Fig. 15) 中のマイクロジェット・クライオトラップは液体窒素により揮発性成分を分離カラムの入り口で一時的に冷却捕集しておくことを可能にする製品です。
以下に示すSTEP1で、試料中の揮発性成分を熱脱着 (TD)-GC/MS 分析法により分析し、その後のSTEP2で、残渣のポリマー成分をシングルショット法で分析します。この手法により、揮発性成分とポリマー成分の情報をそれぞれ分離して得ることができます。

STEP1 TD-GC/MS 分析法
下に示すクロマトグラムは、上図のEGAサーモグラム中のピークA~Cの揮発性成分を分析した結果です。マイクロジェット・クライオトラップを使用することで、高揮発性成分も、シャープなピーク形状で検出することができます。
STEP2 Py-GC/MS 分析法
下に示すパイログラムには、上図のEGAサーモグラム中のピークD, Eに由来するポリマーの熱分解生成物が観測され、アクリル樹脂とジメチルポリシロキサンが含まれていることがわかります。

4.6 ハートカット分析法 (HC/EGA-GC/MS)

EGAサーモグラム中の、任意の温度画分で発生するガスを選択的に分離カラムに導入し、分離分析(GC/MS)を行う手法です。選択的試料導入装置とマイクロジェット・クライオトラップを併用することにより、最大8つの温度画分を、自動的にGC/MS分析することができます。
以下に、サーモグラム上のピークA~Eをそれぞれハートカットし、GC/MS分析した結果を示しますが、ハートカットしたそれぞれの分画成分を詳細に分析できます。
なお、 HC/EGA-GC/MS分析法装置構成図 (Fig. 17) 中の選択的試料導入装置は、EGA分析で得た発生ガス曲線中の任意の温度画分を分離カラムに導入することを可能にする製品です。


