熱分解GC/MS分析の基礎

熱分解GC/MS法
ここでは、GCやGC/MS分析についての基礎的な知識や経験を持ち、一方で高分子材料の熱分解分析法 (Py-GC) についての経験が浅い方や、今後、熱分解分析を検討される方を対象として解りやすく説明します。
2. 熱分解について
2.1 熱分解 (Pyrolysis) とは?
熱分解とは、一般的にポリマー (高分子) を加熱することにより、ポリマーを構成しているより小さな分子に分解することです。多くの場合、無酸素下で行われます。熱分解では、分子結合の開裂や物理状態の変化が不可逆で起こります。
熱分解 (Py)-GC/MSシステムを使用した熱分解分析法について解説します。
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Fig. 3 熱分解分析のイメージ図
ポリマーは、ある原子団が相互に繰り返し共有結合して形成された巨大分子のことで、分子が鎖状に繋がった状態になっています。
熱分解分析法は、これらの鎖を600℃程度の高温で瞬間加熱してほどき、GC/MSのような分析機器に導入することにより、ポリマーの組成を明らかにするものです。
(左図はイメージです) 。
2.2 ポリマーの熱分解と熱分解生成物
炭化水素 (この例ではC4のブタン) は、酸素の存在する空気中で高温に加熱すると、燃焼して二酸化炭素と水になります。
一方、無酸素雰囲気下では、炭化水素はそのCーC結合が開裂し、より小さな分子となります。
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熱分解分析では、分子量が非常に大きなポリマーを、無酸素雰囲気下で高温に加熱して、モノマーを含む小さな分子に分解させることによって、その分子構造を推定します。
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Fig. 4 熱分解とその生成物
2.3 各種ポリマーのパイログラム
パイログラムとは:
熱分解により得られた生成物をGC分離カラムで分離して得たクロマトグラムのことをパイログラムと言います。
以下は、代表的なポリマーを600℃のHe雰囲気下で瞬間熱分解して得られるパイログラムを示しています。
ポリマーの種類により、パイログラム全体の形状が大きく異なることが分かります。
パイログラム上の各ピークは、ポリマーが分解してより小さな分子になったことによるものです。
従って多くの場合、各ピークを同定することにより元のポリマーを推定することができます。
ポリエチレンは、熱分解することにより、モノマーを含むC2からC100以上の炭化水素に特徴的に分解されるので、その組成から容易に元の構造を推定できます。
ポリプロピレンやポリスチレンは、モノマーの他、ダイマー、トリマーまたはそれ以上の分子が観測されます。また共重合体は、より複雑に熱分解します。
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ポリエチレンポリプロピレンポリスチレンスチレン-ブタジエン ゴム

Fig. 5 各種ポリマーのパイログラム